マンションの耐震性について

先日、マンションの耐震診断調査について少しご紹介しましたので、今日はもう少し掘り下げてマンションの耐震性についてお話したいと思います😄

建築物の耐震について語る上で欠かせないキーワードは、「旧耐震」「新耐震」です。中古マンションの購入を検討された方等はご存じかと思いますが、当該建物の建築確認が下りたのが、1981年(昭和56年)6月1日の建築基準法改正の前か後かの違いです。

旧耐震基準
震度5強程度の地震でほとんど損傷しないことの検証を行う

1981年6月1日~
新耐震基準
震度5強程度の地震でほとんど損傷しないことに加えて、震度6強~7に達する程度の地震で倒壊・崩壊しないことの検証を行う

耐震構造制震構造免震構造
強固な柱・梁・耐震壁等により地震の揺れに耐える制震ダンパー等の制振装置が地震の揺れを抑える積層ゴム等の免震装置が地震の揺れを吸収する
制震・免震と比べると揺れが大きい制振装置が揺れを低減させるため揺れが小さい建物に揺れが伝わり難くゆっくりと揺れる
電車等で立って乗っている時に、電車の揺れに合わせて自分の体を揺らすと、揺れを感じにくくなるかと思います。これが制震構造と免震構造の考え方です。逆に、手すりや吊革につかまって体にグッと力を入れて倒れないようにするのが、耐震構造の考え方です。

旧耐震マンションだからダメ!新耐震マンションだから大丈夫!と一概に断言することは出来ませんが、鉄筋コンクリート造(RC造)の税制上の耐用年数は47年とされています。マンションの資産価値等も考慮すると、やはり旧耐震基準で建設されたマンションの耐震診断は重要です。

1995年(平成7年)には、同年に発生した阪神・淡路大震災を機に「耐震改修促進法」が施行され、不特定多数の方が利用する大規模な建築物や緊急輸送道路等の避難路沿道建築物を対象に、耐震診断が義務付けられました。
詳しくは「東京都耐震ポータルサイト」をご参照ください。

耐震診断では、構造耐震指標(Is値)という数値を算出し、建物が保有する耐震性能を判定しますが、「Is値が基準値(0.6)以上=新耐震基準建物」ということではありません。新築設計時に行われる構造計算と、既存建物の耐震診断で行われる構造計算とでは、準拠基準が異なります。新築マンションに経年劣化はありませんが、中古マンションには柱や壁等に経年劣化が生じています。様々な要素を加味し、地震の震動および衝撃に対して倒壊し又は崩壊する危険性が高いか低いか判定するのが「耐震診断」です。

地震による建物被害

建物の強さ
 地震に耐える力がどの位あるのか?
建物の粘り
 変形させ破壊を防ぐ力はどの位か?
建物の形状
 バランスは整っているか?
建物の劣化
 経年劣化の進行はどの程度か?

耐震診断の結果、耐震性が不十分であった場合、耐震改修や建替えを検討しなければなりません。
修繕積立金不足で資金に不安があり、耐震診断を実施することを躊躇されている管理組合様がおられるかもしれませんが、耐震診断を含め国や地方公共団体による助成制度もありますので、まずはご自身が暮らしているマンションの劣化状況や耐震性能を把握しましょう!

建物バランスが悪いマンション
建物バランスが悪いマンション
平面形状・断面形状が不整形/細長い建物形状/混構造建物/ピロティ形状

耐震診断を行う際は、大規模修繕工事に向けた劣化調査同様、目視・打診・触診調査、より詳細な各種物性試験も行います。大規模修繕工事の時期を向かえたら、合わせて耐震診断を実施することをお勧めします。耐震改修を行う必要があると判定された場合、大規模修繕工事と耐震改修工事を同時に実施することで、時期をずらして別々に実施するよりも、資金面や精神的な面で負担を軽減することが出来ます。

当社「グン企画設計」では、一級建築士による技術的な面でのサポートはもちろん、マンション管理士による管理組合様の合意形成サポートも行っております。お住いのマンションで少しでも気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。